เข้าสู่ระบบ「お兄ちゃん!助けてー!」
「待ってろ!すぐ助ける!…くそっ、騎士団より悪魔が多すぎる…」 理由は分からないが突如現れた悪魔の大群は町に現れ、たくさんの人々を殺戮していた。 俺はちょうど騎士団の仕事でこの町にいたので仲間と共に悪魔に対抗していた。 大半の悪魔は倒したはずなのだがどういう訳か悪魔は増える一方でエバルフ達は苦戦していた。 その目の前には妹が悪魔に取り囲まれていた。 「エバルフさん!悪魔が多すぎて我々じゃとても…」 「くそっ、団長がいればいいんだが今あの人は他の任務だからな。どうすれば…」 エバルフが悩んでると妹を囲んでいた悪魔が妹を切り刻もうと爪を振り下ろしたその時。 グサッ… 何かが斬られた音がした。 これは妹が斬られた音ではなく、悪魔が斬られた音でその悪魔は斬られた背中を押さえながら倒れてしまった。 悪魔を斬ったのは黒いローブを身にまとっていて顔はフードを被っていたのでよく見えないがどことなくグレンに似ていた。 周りにいた悪魔は仲間が斬られた事によってこのローブの男を敵と判断した。 そして爪を伸ばして襲いかかった。 しかし、その男は目に見えない速さで悪魔を斬りまくっていった。 そして男が目で判断できる速さになった時には悪魔達の体から切り傷が出てきて血を吹き出しながら倒れた。 それを見たエバルフは妹が助かったと思ってホッとした。 「よかった。妹は無事に助かっ…」 エバルフは目の前の状況を理解するのに少し遅れたがそれに気づいた時彼は狂ったように発狂した。 「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」 そこには悪魔の死体の中に妹の死体まで混じっていたからだ。 「お気を確かに、エバルフさん!…なんて事を…」 横にいた部下の男はエバルフの妹を見てから黒いローブの男を睨みつけた。 黒いローブの男は悪魔と一緒に妹まで斬ったのだ。 しかし、謝罪もせずにその場を立ち去ろうとした。 「…待てよ。」 エバルフはうつむいているが地面につけた手からは怒りで震えているのがわかった。 立ち去ろうとするローブの男を呼び止めたると男は言った。 「…何を怒っている?俺の射程距離にコレがいただけだ。運が悪い。」 「な…に…」 「そんな睨むな。助けれなかったのはお前の弱さ以外何もない。」 その男は悪びれるどころかエバルフの弱さが原因とハッキリ言った。 エバルフはその男のイカれた発言に我慢できず、手元にあった剣でその男を斬りつけようとした。 しかし男はその剣をかわすとエバルフの首筋を手で叩きつけ、エバルフは地面に倒れた。 「弱いくせに人助けなんざ笑わせる。俺はお前みたいな弱いくせに守るとかほざく奴が大っ嫌いなんだよ。」 ローブの男はそのまま去ろうとするがエバルフの部下達は男の目の前に立ち塞がった。 「どけ、死にたくなかったらな。」 「どきません!さっきの言葉訂正して下さるまで…どきません!」 部下の1人が懸命になって言うが顔には涙と恐怖でブルブル震えているのが伝わってくる。 「はぁ、無理するな。そんな事しても悪魔祓いの俺に勝てるわけないだろ?」 ーそうだ、やめろ…お前達じゃ勝てな… 「勝てるか勝てないかじゃない!あなたは私たちの職業を…騎士団の誇りを侮辱した!訂正するまで絶対に許さないぞ!」 「…はぁ、そんなに死にたければ…今すぐ殺してやる。」 男はそう言って剣を抜き始めた。 「よせ…やめろ…やめろーーー!!」 その後、男はエバルフ以外の部下達を容赦なく殺した。 その時のエバルフには絶望しかなかった。 そして思った。 「許さない、悪魔祓い」 エバルフはその憎しみを全て強さに変え、3年後12騎士長の1人となった。 昔の純粋な夢を抱いたエバルフ・シュロンはもういない。 いるのは憎しみによって生きているエバルフ・シュロン。 そう、俺は強くならなきゃいけない。ならなきゃ誰も助けられないー 「…そうだ…強くならなければ…誰も守れない…」 諦めかけたエバルフは再び落ちている剣を持ち立ち上がった。 「…?」 「悪魔祓いを装って人々を殺める貴様ら邪道を…俺は…許…さない!」 その瞬間、エバルフの体の周りから黒い魔力のオーラが放たれた。 そのオーラと共に体が黒く変色し、右片方の目だけ黒から赤に変わった。 「何あれ!?あの人の体が黒く…」 後ろで見ていたミーナは当然驚いた。 その黒い姿がまるであの時のシェスカに似ていたのだ。 しかし、その姿を見て驚いたのはグレンも同じだった。 「まずい…あれは悪魔化だ。下手したらあいつ悪魔になるぞ…」 「その通り!いやー、ここまで仕上げるの本当大変だったよ。」 突然聞こえてきた声は今まで気にしてなかったエバルフのもう1人の部下のロフィスだった。 見た目は部下と同じ様に鎧と剣を持った騎士らしい姿で髪と瞳は明るい茶色の男。 ロフィスは今までグレンとエバルフに気づかれないように建物の屋根の上に隠れていた。 そしてそのまま屋根から飛び降りでグレンの前に着地し。 「初めまして、紅の悪魔祓い・グレン。そしてありがとう。あのエバルフをここまで悪魔化させるのに協力してもらって。」 優しく笑いながら感謝の言葉をするロフィス。 グレンはそれを無視して。 「お前は何者だ。魔法騎士団のやつじゃないな。」 「俺か?んー…知ってどうする気?」 ロフィスはおちょくっているのか空中に浮くと逆さになった状態でグレンの顔と向き合った。 向き合った直後に一瞬でエバルフの真横に移動した。 「空間移動…」 「そう、これはあんたと同じ転移魔法。あんたに追いつけたのは予知能力とこの空間魔法のおかげって訳だ。」 「なるほど、通りで最近俺に追いつく距離が狭まってたのか。…で、お前は何者だ?人の悪魔化を望んでるから人間ではなく悪魔なのは確かだ。…そしてそこらの悪魔とは比較にならない程の魔力だ。」 グレンが悪魔祓いになってからビビった事はこの10年間で数える程度しかない。 そのグレンが今ビビっているという事はその周りにいる部下達とミーナもビビっていた。 そしてロフィスは口を開けた。 「…いいだろう…教えてやるよ。俺は悪魔だが他の奴らとはケタが違う。なぜなら…俺はあの悲劇の国で生まれた悪魔!その名も悪魔の上の存在…獄魔(デーモン)だ!」 「獄魔…なるほど、俺の魔法をかわせたのも理解できるな。」 「まあ君ならその気になれば俺なんて普通に殺せるだろ?」 そう言いながらもロフィスは口角を吊り上げながら不敵な笑みを浮かべた。 そして悪魔化してるエバルフの肩に手をポンと置き。 「さあエバルフ。あの憎っくき悪魔祓いを殺しなさい。そうすればお前の憎しみはなくなるぞ?」 ロフィスの言葉によってエバルフは甲高い雄叫びをあげ、黒くなった腕はさらに歪さを増して人の腕の原型をとどめない形に変わっていく。 顔はさっきと同じで右片目だけ赤くてさっきと変わっていないが物凄い形相でグレンを睨みつけていた。 ー来る! そしてその一歩目が早かった。 数メートル離れてるのにも関わらず一歩目でグレンに近づき剣を縦に振るった。 グレンも大剣でそれを防ぎ回避するが予想以上の威力のため少し押され気味だった。 回避してからバックステップで距離を保ってからグレンの手から光の球体を発現させ、その球体をエバルフに向けるとそれを光線のようにして打った。 (くらえ!この光の最上級魔法は回避不可能だ!) キィィィン! しかし、エバルフはその光の光線をいとも簡単に跳ね返してしまう。 「俺の光属性の最上級魔法を…」 自分の中の最上級魔法の中で最速を誇る光魔法を見切られ、動揺を隠せないグレン。 「…許…さない…。許さないぞ…紅の悪魔祓い!」 「俺はお前に恨みを持たせるようなことをした覚えはない。」 「ふざけるな…妹を…妹を返せ!」 何を言ってる?俺はエバルフと初対面だし、ましてやあいつの妹なんて知るわけが… 「そうだエバルフ!そいつがあの時お前の妹を殺した張本人だ!遠慮せずに盛大に殺せ!」 ロフィス…どうやらこの訳のわからん自体を招いた張本人だな。 一方ミーナと倒れていた部下たちは変わり果てたエバルフを見て。 「やはりあの人は3年前の事を…このままじゃあの悪魔化とやらに…」 「くそ!…ロフィスの奴め、前々から気にくわない奴だったがまさかあいつが悪魔だったとは…」 どうやらエバルフ以外の何人かの部下はロフィスの心に気づいていたようだ。 しかし、エバルフはなぜグレンを恨むのか。 それが気になってミーナは聞いた。 「あの、すみません。」 「!?君はあいつ(グレン)の…」 「怖がらなくてもいいです。私は勝手にグレンについて来てるだけなんで。」 部下たちはミーナに声をかけられた瞬間ビビって一歩後ろに下がった。 「ああ、すまない。…で、何…かな…?」 謝っときながらまだビビってる。 私がグレンと旅してるからってグレンみたいな人と勘違いされるのは嫌だなぁ。夢の中のグレンはいい人だけど。 そんな事を思いながらミーナは部下の人達にエバルフがなぜグレンを恨むのか聞いた。 エバルフが騎士団に入った理由。妹と部下が悪魔祓いに殺された事。その悪魔祓いがグレンにそっくりな事をまとめて全部教えてもらった。 「…ということだよ。エバルフさんはそれ以来強さだけが人を守るという信念を持たれたが…」 「その信念はやがて憎しみに変わり、市民の命よりも悪魔祓いの復讐心の方が強くなった。」 「ロフィスのせいだ!あいつがエバルフさんを洗脳したんだ!チキショー!」 最後に言った部下は地面を殴りながら涙を流した。 それはただ忠誠心が強いから仕方なく泣いてるのではなく、心の底からエバルフを心配しての涙だというのがミーナに伝わった。 そしてミーナも鼻をすすり、両目から雫が頬をつたった。 「…エバルフさんは妹を失って、全てを恨みたくなる気持ち…すごく分かります…でも…でも、妹さんは…彼の復讐を望んではいないはずです!」 ミーナは涙を拭き払ってグレンとエバルフが戦ってる方を向いた。 「お嬢ちゃん…まさかあんたあの2人を…」 「止めてみせます!私は決めたんです…グレンを元の優しい人に戻すこと!そして、もう二度と悪魔の悲劇を生まないためにも…私はエバルフさんの悪魔化を止めます!」 そしてミーナはグレンとエバルフの方へ歩き出した。 「うぉぉぉぉぉぉ!!!」 剣を振りかぶりながら接近するエバルフ。 グレンは悪魔化したエバルフに苦戦を強いられていて、今の剣の一撃も大剣で打ち流してかわした。 (おいグレン!なんで本気で戦わん!?) 「お前か…こんな時に声をかけてくるな、後にしろ!」 後ろにバックステップしてる時にグレンの中にいる悪魔が周りに聞こえない声で喋りかけてきた。 (アホか!死んだら何にもなんねーだろ?さっさと黒炎使って獄魔とあの人間殺しちまえ!なんで使わねーんだ?) 「うるさい!今戦ってんのは俺だ!いちいち俺に指図すんじゃねー!」 グレンは悪魔の声を吹き払うかのように大剣を振ると風魔法の効果でエバルフに向かって斬撃が飛んだ。 しかし、その斬撃を軽く避けるとエバルフは風魔法の身体強化で速さを増しながら突っ込んできた。 グレンはどんなに苦戦を強いられても黒炎を使わないのでお互い一歩も譲らないまま攻防戦が続く。 「(くそっ!分かってる…黒炎使っちまえば余裕で殺せる…。だが…今あいつは殺しちゃいけねーような気がする!かといって、このままじゃ俺もヤバイ…どうした俺?変な気持ちを起こす前にいつもみたいにさっさとこんな奴殺しちまえよ!)」 そんな事を考えてると剣がグレンの右肩に擦り、マントが破けるとそこから血が流れていた。 その影響で身体の重心がぐらついて地面にこけてしまう。 エバルフはグレンのこけた姿を真顔で見下ろした。 「ぐっ!…」 「終わりだ…俺の妹を殺した外道の悪魔祓い。死ねっ!」 エバルフが剣を振り上げようとしたその時。 「やめてください、エバルフさん!」 剣を振りかぶった隙に走ってグレンの目の前まで行くと両手を広げてグレンを庇う姿勢を作った。 それに気づいたエバルフは振りかぶった状態のまま静止した 「邪魔するな!どうせお前も悪魔祓いの手先だろ?お前は後で殺すからそこをどけ!」 エバルフの左目と赤い右目がミーナを一直線に見つめた。 怖い、…足が震えているのが自分でも感じる…でも…私はそれでも… ミーナは怖くて震えながらも力を振り絞って言い放った。 「もう、やめて下さい!あなたは…あなたの目指していた騎士団は…復讐を果たすだけの…そんなものだったんですか?」 「何ぃ…?」 エバルフの殺気がきつくなり、剣を握る力が強くなった。 「バカがミーナ!あいつの怒りを高めてどうすんだよ。そいつの目的は俺だけだ。お前はとっとと退が…」 グレンがいち早くエバルフの殺気に気づき、ミーナに退がれと言おうとした時にはエバルフは剣を振り下ろしかけていた。 「くっ…!」 「あぁ、あの子殺され…」 部下達もグレンもダメだと思った時、ミーナは一言。 「あなたの妹はそんな姿を望んではいないはずです。」 その一言でエバルフの剣がミーナの頭の上でピタッと止まった。 「バカな…奇跡だ…」 多分この場にいるほとんどがびっくりしたはずだ。 あのロフィスでさえ驚きのあまり開いた口が閉じれなかった。 「俺の…妹…」 「あなたの妹は3年前に殺された。しかもグレンにそっくりな悪魔祓いに。」 「…!?」 「…なんだと?」 その言葉にグレンも驚いたがミーナはそれでも話す事を止めずに。 「確かにそんな辛いことがあれば誰だって辛くてその殺した奴に復讐したくなる気持ちも…私には分かります。」 「ふざけるな!お前なんかに何が分か…」 「分かるよ。私も同じように学校の親友を悪魔に殺されたから。」 「…くっ!お前は所詮友達だろーが!俺は家族を失った!たった1人の…残された1人の家族を奪われたんだ!こんな気持ち…お前なんかに…」 「所詮って何よ?」 ミーナの表情は強面に変わり、声が低くなった。 「大切な人は家族以外にもあるはずよ。あなたたち騎士団は市民の人の事も所詮赤の他人って言うの?」 その言葉にエバルフは何も返せなかった。いや、今の自分の事を考えると返す言葉なんてなかった。 そしてエバルフは正気を取り戻したのか次第に赤くなった右目が戻っていき黒くなった体も元に戻っていった。 「何が全ての人々を守るよ…何が騎士団は市民のヒーローよ。簡単に闇に堕ちてしまうような弱いヒーローなんていない方がいい!今のあなたは騎士団に相応しくないって昔のあなたならすぐ気づけたはずよ!」 「……!?」 「…今ならまだ間に合うはずです。もう、復讐の為に生きるのはやめて下さい。昔の、純粋に市民を守ろうとするエバルフさんに戻って下さい。天国にいる妹さんはそれを望んでるはずよ。」 ミーナは最後に優しくそう言った。 エバルフはようやく自分の愚かさに気づいたのか上を向きながら号泣し、そのまま座り込んだ。………ここは、どこだろう?気付いたらそこは真っ暗な空間にミーナはいた。「ここは…旅に出る前に見た夢の中みたい。夢の中のはずなのに夢じゃないみたいな…」そう。ここは初めてミーナが夢の中で優しい心を持つグレンと出会った場所であった。「ミーナ。」この声は?そう思ったミーナは声のする方を向いた。そこにはあの夢の中で初めて出会った黒髪のグレンが居た。「あなたは、あの時夢の中で会ったグレン?」そう質問すると、何故か黒髪のグレンは涙を流しながら言った。「…お願い…助けて欲しい。」そう言ってグレンは闇の中へと消えていく。「え、ちょっと待って!どこ行くの!…ねぇ!」ミーナは呼び止めたがグレンは何も言わずに消えていく。夢の中で走っていると何かにぶつかる様な衝撃が伝わった。「痛っ!」目の前で誰かにぶつかってしまったのか、ぶつけられた人は痛みを口にした。「…ハッ!…夢か……。」「…もぉ。夢か…じゃないわよ。何時だと思ってるの?」ミーナとぶつかったのは隣で寝ていたエミルであった。時刻は既に午前2時を過ぎており、起こされたエミルは滅茶苦茶不機嫌そうにミーナを睨みつけていた。「ご、ごめんねエミル。変な夢見てしまって…。」「もぉ……」そう言ってエミルは再び布団を被って眠りについた。「(今の夢、何だったんだろ?あの黒髪のグレンが現れたって事は、現実のグレンに何かあったんだろうか?)」「…ちょっと駄目だ…もう、眠い…。」少し考えたミーナであったが眠気には勝てなかった為、彼女もすぐに布団を被って眠りについた。ミーナ達はクレーアタウンでアスモディウスと戦ってから10日程の日が過ぎ去っていた。カイルはクレーアタウンで起きた悪魔との戦いで、カレンが悪魔サイドに居たことを西の大国イフリークの騎士団達に無線で伝えた。騎士団達の反応はそれぞれ違っていたが、全員悲しみに暮れていた。特にエバルフ。彼はカレンととても仲が良かった為、敵となったカレンを聞いて現実を受け止めきれずにいた。イフリークに残った12騎士長は5人4騎士長、ウェンディー・ソルディア5騎士長、シキ・ラインハルト6騎士長、エレンシー・ガーデン7騎士長、アレックス・マーベルそして12騎士長、エバルフ・シュロンこの5人はカイルから聞いたレミールに残った騎士長達の訃報を聞き、後日直接レミー
2人が見た通り、確かにヒスイはグロードを助けた。それは紛れもなくその場で起きた事実である。しかし、2人の記憶による事実と今こうして実際に起きたヒスイが刺された結果が矛盾している。何があったのか?それはベリエルの持つ虚無の魔眼の力が原因である。[あらゆる事象に対する再試行]これはその時に起こった場面を無かった事にし、再度その場面をやり直す事が出来る力。例えるなら、(殴られた→やり直し→殴られる前に戻る。)といった様に、実際起きた事を無かった事にし、起きる前に戻る事が出来る。言うなれば、時を巻き戻す力に近い力である。この力は虚無の魔眼を見せた相手にのみ発揮する。先程2人に虚無の魔眼を見せたのはこれを行う為であった。南の大国シルフで、カイルがハイド(ベリエル)に優勢だったがそれを一気に覆されたのも、この力が原因である。(第18話参照)そしてグロードが気がついた時にはヒスイは既にベリエルの黒い槍に突き刺されており、引き抜かれたと同時に後方へと倒れていく。「ヒスイ!!!!」ヒスイが倒れていく姿を見て叫ぶグロード。何故こうなったのか、考える余裕さえ無い。目の前で妻が刺された事に対する怒りがグロードの心を真っ赤に染め上げる。そしてグロードは空間移動でベリエルの元まで転移し、ベリエルの胸ぐらを掴む。「ぐっ!…」この時、何故かベリエルは虚無の魔眼を見せてこなかったが、この時はそんな事が気にならないくらい怒りの感情のみがグロードを突き動かしていた。怒りが爆発したグロードは胸ぐらを掴んで動けなくなったベリエルの顔面を拳で連打した。「うおおおおおお!!!!」ガスッ!ガスッ!ガスッ!ガスッ!……!何度殴っただろうか。何故か無抵抗のベリエルをグロードは怒りのままに殴り続けた。そして、右拳に魔力を込める。全属性を操れるグロードは、右拳に全属性の力を纏った。全属性とは、基本属性である8属性(火、水、風、雷、土、空間、光、闇)。これらを全て併用すると、相反する属性同士が互いを弾き合う。普通に使えば術者に影響が及ぶ危険な行為。しかしグロードは呪いにより死なない不死身の身体である為、その様なリスクが無い。無尽蔵に溢れ出る魔力を、右拳に纏った全属性の魔力へ更に加算する。魔力が増えれば弾き合う力も更に強化される。グロードはその強大すぎる力を全て、ベリ
ラウスが産まれてから5歳になった頃。未だグロードはベリエルを見つけられずにいた。その日は休日出勤で働きに出ていたヒスイの代わりに、グロードがラウスの世話をしていたのだった。「お父さん!」グロードの所まで走って近づくラウス。ラウスは髪色は母親譲りの綺麗な白銀であったが、顔はどちらかというと子供の頃のグロードに似て優しそうであった。「どうしたんだ、ラウス?」「この魔法書に書かれてるやつが分からないんだけど、教えて欲しい。」ラウスはどうやら魔法書を見ながら勉強しており、グロードは分からないところを教える為に一緒に見た。ーーこうしてると、ベリエルに勉強を教えてた頃を思い出す。一瞬ベリエルを思い出したが、すぐにその思い出を振り払った。「(いかん!ラウスはあいつとは違う!あいつはもう弟じゃ無い。憎むべき男なんだ。)」グロードは邪念を払う様にして、そう自分に言い聞かせた。「どうしたの?」「あっ…えっと、何でも無い!…ここが分からないんだな?」グロードはラウスが聞いてきた分からない部分を見て驚いた。「(…これは…高等魔法の専門書じゃ無いか。とても5歳が理解出来るレベルじゃ無いぞ。)」ラウスは魔法の理解力が異常に高く、それは紛れもなく10歳で実用性のある魔法を発明していったグロードの血筋であった。「ここはな、こうだから……。」噛み砕いて教えたつもりだがどうしても難しい専門用語を使う為、高校生でも理解が困難なレベルであった。しかし、ラウスは。「ありがとう!それだけ分からなかっただけだから!」 そう言ってラウスは専門書を持って部屋に戻って行った。ーーあの難解な本の一部分が分からなかっただけ?「…凄いな。流石は、俺の息子だな。」5歳にしては凄まじい魔法の才能を発揮するラウスに驚いていたが、自分の息子がこれ程の才能を持っている事に対して誇らしくなった。それから7歳になって少し身体が大きくなったラウスは体術の面でも凄まじい才能を発揮していた。「やああ!!」ラウスは殴る時に上記の様な子供っぽい掛け声を出すものの、それまでの動きが凄かった。グロードは手加減してるものの、まるで次に動き出す足の動きが見えているかの様にラウスは予測していた。その様子をヒスイはちゃんと見ていた。その夜、ラウスが寝静まった時にヒスイから話があった。「あの子、
月の遺跡から現れた古の化け物達が世界中を暴れ回った事により、多数の他国の人が亡くなったこの事件は世界中で瞬く間に広がった。現去流時(げざると)で生き返るのは、同じ種族の人間のみ。つまり、月の民が生き返った事により他国の人間は殺されて亡くなったままであった。これにより、今回の首謀者は今まで古の化け物達を野放しにし続けてきた月の民の責任だと言われ、これが更に月の民達への差別が助長される要因となった。この差別は風化される事が無く、時間と共に他国からの恨みばかりが募っていった。一方、古の化け物達を倒し世界の人々を救ったと持ち上げられたグロード。彼は世界の英雄として一躍有名人となった。沢山の人に賞賛され、感謝される日々。中にはグロードが古の化け物達を倒した事を記す為、絵物語を書きたいと懇願してきた絵師も居た。ーーもう、好きにしてくれ。投げやりに全てを受け入れるグロードは、ほとぼりが覚めるまで、人々の"英雄ごっこ"に付き合った。そして50年が経った頃には彼の事を知る者が死に去っていき、その頃にはもうグロードの事を英雄と呼ぶ者は居なくなっていた。50年も経てば時代の流れもそうだが、人々の価値観や文化も大きく変わっていく。しかし、変わらないものもあった。1つは月の民の差別。これはいつまで経っても、古の化け物達が世界中を暴れ回り、その生まれ変わりが現在の月の民だと後世に語り継がれていた。その為、実際古の化け物達が暴れた所を見た事がない後世の人々も、月の民が恐ろしい存在であるという価値観だけ植え付けられていた。そしてもう1つ変わらない事がある。これは50年経つ前から感じていた事だ。歳を取っていない。グロードは40歳の姿から変化が見られ無かったのだ。何故変化が無いのか?それはベリエルが掛けた呪いのせいであった。ベリエルはリオ王国の人達を超月食の日に自身の生命エネルギーに変換させ、それによってベリエルは不老不死となった。そんなベリエルに掛けられた呪いにはある条件があった。「この呪いは、術者が死ぬまで継続されるものである。」つまり、これはベリエルが死ぬまで呪いが解けないという事だ。不老不死になったベリエルは死なない為、呪いを掛けられたグロードとアガレフも必然的に不老不死となってしまった。これが、2人が400年間死ぬ事なく生き続けてきた理
それからもグロード、アガレフ、ベリエルは共にリオ王国で平和な日々を過ごしていった。グロードはあれから魔法の鍛錬を積んでいったが、時々月の遺跡へ出向いてアマルとサマスに修行を付けてもらう事が増えた。アガレフもグロードと一緒に月の遺跡へ出向き、修行を付けてもらっていたが彼には既に沢山の弟子が居た為、都合が合わない日が多かった。そしてベリエル。彼はこの頃になると部屋に閉じ篭もる事が増えた。理由は分からないが、何を聞いても調べ物をしてるだけだと言い、詳しい事はグロードとアガレフに教えようとしなかった。一度気になったグロードとアガレフはベリエルの部屋に行ってみた。扉の前でアガレフがグロードに言った。「ベリエルの奴、朝から部屋でずっと何かしてるみたいなんだが…どうも様子が変なんだ。」「ああ。確かに変だ。ベリエルがこの部屋に閉じ篭もってる間、一切の魔力を感じないからだ。」異変に気付いたのはグロードも同じであった。魔力を感じない。というよりも、まるでそこにベリエルが存在していない様に感じられた。気になったグロードはベリエルの部屋の扉をコンコンとノックした。数秒待っても反応は無く、静かなままであった。「…やはり様子が変だ。扉を開けるか?」「待て、アガレフ。流石に勝手に入るのは…。」すると目の前の扉がギィィッとゆっくり開く音が聞こえてくる。中からは相変わらずクマが酷いもののいつもの変わりない表情と姿、そして魔力のベリエルが出てきた。「…どうしたの、兄さん達?」何故か扉の前にグロードとアガレフが居た為、キョトンとした表情で2人を見ていたベリエル。「…いや、…何でもない。ずっと部屋に閉じ籠ってるから心配になってな。」「そ、そうだ。偶には、外に出て身体を動かしたらどうだ?」さっきまで魔力が感じられなかったベリエルはまるでそこに居ない様な気配であったが、突然その場に現れた様な気配に2人は驚く。しかし、一先ずベリエルに変わりがない事を確認して2人は安心した。「……んー、確かにそうだね。偶には身体を動かさないとね。…明日、久し振りに兄さん達に稽古を付けてもらおっかな!」グロードとアガレフにそう言われて頭を傾げ、少し考える様な間が気になるがすぐに笑顔になった。それを聞いたグロードとアガレフもベリエルに釣られて笑顔になった。「ああ。勿論だ。」「
そして次の日の朝。グロードとアガレフは月の遺跡へ向かう準備をしており、王宮の外には2人を見送る為に沢山の国民達が集まっていた。2人はリオ王国内では沢山の任務を受けていたが、国外に出て何かをするのは初めてであった。更にリオ王国内では英雄の様な存在である2人は皆んなの憧れであり、国民達全員から愛される存在であった。「グロード様!アガレフ様!お気を付けて!」「ああ。行って来る。」王宮の兵士に言われたグロードとアガレフは一礼し、王宮を出た。王宮を出た途端、国民達による大きな歓声が飛び交った。「お二人共ー!どうか無事に帰って下さい!」「月の遺跡の化け物なんかに負けないで!」「グロード様とアガレフ様が組めば敵なんて居ないさ!」「そうさ!何たってリオ王国最強の魔導士だぜ!化け物なんて全部倒してくれる筈さ!」「頑張れー!!」向けられる歓声に対し、それに応える様に2人は国民達に手を挙げて振った。リオ3世とベリエルはその場に居なかったが、王宮のベランダから2人が歩いて出て行く姿を見ていた。「ベリエル。お前もいつかきっとあいつらみたいになれる筈だ。」「…はい。僕も兄さん達に追いつける様に努力します。」リオ3世は2人の姿を見つめながらベリエルに向けてそう言った。ベリエルはそれに対し表情を変える事なく、リオ3世と同じ様に2人を見つめながらそう答えた。何を思っているのか分からない程、表情が全然変化しないベリエル。グロード達と暮らしていく内に嬉しかった時の表情だけは作れる様になったベリエル。だが、大きくなってもそれ以外の感情による表情は作れない様だった。その表情の裏に潜む感情を読み取る事は誰にも出来なかった。数週間後、グロードとアガレフはようやく月の遺跡の近くに着いた。月の遺跡の周りは乾燥地帯である。現在はティラーデザートと呼ばれる砂漠地帯となっているが、それでも当時は所々に草木が生えていた。しかし月の遺跡に近づけば近づく程、乾燥が酷く草木もあまり生えていなかった。そしてようやく月の遺跡には着いた。月の形をした石像が上に飾られた神殿が遺跡の中央に建てられ、その周りには[月の民]と呼ばれる民族が住む石造の家が多数建てられている。化け物が居ると聞いていた為、酷く荒らされているイメージを持っていた2人であるが、見た感じその様な形跡は見られない
アガレフは家の前で見送ってくれるリーナと、彼女に抱き抱えられているミーナの方を見た。 あの赤ん坊の頃に比べると少し大きくなったミーナ。金髪で青い瞳に綺麗な顔立ちが、どことなく母親であるリーナに似てきた気がした。 「じゃあ、行ってくる。」 「…うん。ずっと、待ってるからね。」 そう言ってアガレフとリーナは最後の口付けをした。 そして最後にミーナの方を見た。 「おとー。おとー。」 手を伸ばしながらお父さんと呼ぼうとしてるミーナ。その純粋無垢な瞳には、今日を最後に会えなくなるなんて微塵も思っていないのが分かる。 アガレフはミーナの額に手を当て、撫でながら言った。 「ミーナ。これか
「皆さん、落ち着いて下さい!こっちへ避難して下さい!」巡回してたカレンは突然の悪魔襲撃に混乱してるレミールの国民達を悪魔が少なそうな場所へ誘導し、前方から襲って来る悪魔を返り討ちにしていた。しかし、地上へ繋がる道はアスモディウス達が通ってきた場所しかこの国には無い為、国民達は結局逃げ道から遠ざかっていくだけだった。カレンは只ひたすら、逃げ道の方から現れる悪魔達を斬り倒していた。「(何で悪魔がこんなにも湧いて出て来るの!?国の入り口で待機してたザジさんは?もしかしてやられたの?)」そんな事を思いながらカレンは剣を振り続けた。一方、他の場所でも騎士長達は悪魔達と交戦していた。「悪魔
その頃、カイルとエミルは別々の場所で悪魔の大群を相手にしていた。カイルは目の前から襲ってくる悪魔を見た。「目の前にはおよそ100体か。いや、この周囲の魔力を探ればそれ以上…」「面倒だ。纏めて一気にぶった斬る!」カイルは自身の影を直径10kmの範囲まで広げた。この3日間、魔力の流れを読む訓練をしていた為か、カイルの魔力操作の練度はかなり向上している。本来10kmまで影を広げてしまうと剣を振るっても影の端に居る敵に与えられる威力はかなり落ちてしまう。しかし魔力の流れを読める様になった今、カイルは見なくても相手の位置は勿論、身体の部位が隅々まで分かるレベルまで察知出来る様になっていた
これは愛を知らずに育ってきた男の話。彼はこれまでの人生の中で物心ついた頃から愛という物に触れる事なく生きてきた。ネル・ナイトフォース。彼は5歳まで北の大国の中心都市部にある貴族の家で奴隷として過ごしてきた。物心付く前から奴隷として仕えていたが、そこでは人権というものが存在しなかった。「おい、ゴミ!さっさとこの食器片付けろよ!」その屋敷の主である中年男は仕える奴隷に向けて済んだ食器を片付ける様に命令した。「…はい。」命令を受けて出てきたのは当時4歳のネル・ナイトフォースだった。彼は肌着同然の薄い半袖の服にヨレヨレのズボンを履いていた見窄(みすぼ)らしい少年だった。身体を洗わせ